もし、ガーデンデザイナーであれば、お客様の心に安らぎを与える空間をご提案すると思います。書道にもいえることなんですけど、空間の中にどうものを配置するか、ですね。空間を活かした庭であること。日本人の美意識である、左右非対称な空間、あえてのアンバランスさを持つことが心地良さにつながる気がします。「欠け」の部分には、日本らしさの侘び然びを感じるものですから。もちろん、全体を左右対象に並べる西洋的なものもいいのですが、そこに日本庭園の良さを調合したような庭が提案できればいいと思います。シンプルだけどこだわりがあって、洋すぎず和すぎず日本らしさが残る空間。お客様に喜んでいただけるような空間であること、それが一番だと思います。
1980年 広島県生まれ
10歳より書を学び、高校在学中より坪井工鷹氏に師事。
大学卒業後、国語・書道講師を務める傍ら、「河内書道教室」を開講。
現在は、商品や看板のロゴ、書による空間デザインなどを多数手がける一方、異分野アーティストとのコラボ作品や書道パフォーマンスなど、表現者として活動の幅を広げる。
また、平和都市広島から書道を通じて、平和を繋ぐ活動も行っている。
hiromoji -書道家 河内裕美 公式HP http://hiromoji.com/
「書道は誰にでも触れられるアートである」そう話すhiro氏。10歳から始めた書で、数々の賞を受賞。大学では、書を専攻し古典を学びながらその技術を磨きました。卒業後は、中学と高校で書道の講師として働きつつ、2003年に「河内書道教室」を開講。のちに書道家としての道に絞り、現在では自身の作品の展示会を開催したりイベントで書道パフォーマンスを行ったりと、活動の幅を広げています。
表現者として活躍するhiro氏が求める理想の庭とはどんなものなのか、お話をお聞きしました。
お客様に寄り添って
思いを書に表していく
現在は、書道家として店名や商品のロゴ制作を中心に活動しています。実際にお客様から「どのような意味で店名をつけられたか」「どのような思いでやっていきたいか」など、店名の意味だけでなく背景もしっかりとヒアリングして、頭で描いたお店のイメージを書に表します。お客様の思いを反映させながら、全体の構成を頭で組み立てて、線の太さ、細さ、筆の流れなど、細かいところを詰めて書き込んでいく。制作は、早ければ数日で上手くできることもありますし、思い通りにいかなくて数ヶ月と時間がかかり、何百枚も書き直すこともありますね。
小学生から一般の人向けに、週に2,3日程度で書道教室も続けています。もちろん、自身の作品の展示会を開いたり、イベントで書道パフォーマンスしたり、作品としての書も手がけます。書道パフォーマンスは、日本の伝統文化である書道を知ってほしいという思いから、小さなイベントから大きなイベントまで、ご依頼があればできるかぎり行っています。
枠に囚われない発想
書道というアートを伝える
大学卒業後、中学と高校で国語や書道の講師をしていました。中学までは文字を書き写す書写を学びますが、高校では書道に変わり、芸術を学ぶことになります。しかし中学での書写の概念が強く残り、高校の書道にうまく移行できない子たちが多くて、もったいないなと感じることも多かったんです。たとえば夏休みの宿題として学生に書道展に行っての感想を聞くとします。すると8割ほどの学生から、読みやすい楷書が良かったという答えが返ってくるんですね。くずさず書いた楷書が1番であるという概念に囚われてしまっているのが、残念だなと。もちろん基礎があっての書道なんですけどね。
美術展には足を運ぶ人が多いのに対して、書道展は敷居が高いと思われ敬遠されがちなのが現状です。学校で働くうちに、日本人にとって身近なはずの書道をもっと伝えたいとい思いが強くなり、出産を機に書道家として活動することに決めました。書道は、墨の黒と紙の白、印の赤の3色でつくるアート。くずした字は文字として読みづらくても作品として見て楽しめるもの。誰にでも楽しめる身近なアートなんですよと伝えています。
誰にでも楽しめるよう
書道をもっと身近なものに
年に数回は「酔いどれ書道」というイベントを開催しています。文字どおり、お酒を飲みながら楽しく書に触れてもらうイベントです。参加された方は、最初はきれいに書こうとするんですよね。でも、段々と酔っていくと、自由に描くようになる。そこにアドバイスを加えたら、本当に良い作品になるんですよ。大人の方にもこれまでの書道との違いを感じてもらいつつ、少しずつ書道を身近なものとしてとらえてもらえたらいいなと思っています。
私自身、本格的にアートとしての書道に取り組み始めてからは5年ほど。まだまだ師から学んでいる段階です。「感書」というテーマを掲げ、「感性に伝わる、感動させる、感慨深いものに」という思いで作品をつくっています。表現者として、固定概念に囚われない自由な発想で、作品として魅了できる作品を届けたいと思っています。
自然を活かした癒しの空間
作品づくりのヒントにも
庭をつくるとしたら、家族に癒しを与える庭がいいですね。小さな森のなかのような感じで、自然と触れ合えるような空間かな。家族でのキャンプ、その延長線のようなイメージです。具体的には、広すぎず狭すぎないような広さで、全体のバランスを確かめながら、お気に入りのアイテムを置きます。鉢や壁に筆で何か書いても面白いですね。
また、作品づくりのための庭であるといいなと思います。わたしは作品のヒントを得るために、よく空を見るんです。空と、そこに流れる雲とのバランスにヒントがあります。雲の配置によって空の余白が活きてくる。それに雲の形もさまざま。庭から見ると、その空や雲を切りとれるようであればいいと思います。また、目線を下に変えた先には、木の影やその時々で心地よい空気が流れていると新たな閃きにつながります。
家族団らんの休憩スペースであり、仕事にもつながる、作品制作のヒントになる庭って、贅沢ですか?(笑)
日本らしさを取り入れて
空間をデザインする
hiroさんは、パフォーマンス時には、アーティストであるとともに、パフォーマーとして見られることも意識しているといいます。自身の存在も、そこに在るもののひとつとして空間を演出しつつつくりあげていく姿は、大胆かつ繊細。そして独創的です。
書道を用い人々を魅了する表現者、hiroさんがイメージする庭は、自然とともに存在する空間であり、そこには書道と同じように日本らしさを大切にする思いがありました。