Creative Eyes

住まいの一部ではなく
枠にはまらない「庭空間」としての可能性を広げたいという思いから
「Creative Eyes」は始まりました。

さまざまな業界で活躍する "クリエーター" ならではの視点。
独自の発想や、またその奥の人柄が垣間見られるアイディアなど
さまざまな視点で語られた「庭構想」をご紹介させていただきます。

私なら、こんな庭をつくってみたい。 庭づくりには豊かな創造性が求められるもの。各業界で活躍するクリエイターは、どんな庭をつくりたいと考えるのでしょうか。新しい視点のクリエイティブな発想から生まれる庭とは――。

「世界観をつくる」仕事 フォトグラファー 角田修一

1975年 東京生まれ
多摩美術大学 グラフィックデザイン専攻卒業
広告を中心に、CDジャケット、ビューティー、ポートレートの分野で活動中
青幻舎より『THE Parodist』、角川書店より『トゲもふ!はりねずみのあずき』、日本写真企画より『あずきとうに』を出版
http://shuichitsunoda.com

美術大学にてグラフィックデザインを学んでいた4年間、メンズファッション誌のモデルとして活躍。
「モデルとして撮影現場に携わるうちに、一部ではなく全体の世界観をつくりあげるカメラマンという仕事に惹かれるようになりました」
という角田修一氏。卒業と同時にフォトグラファーとなり、今年20年目を迎えられました。さまざまなジャンルの広告や雑誌、
CDジャケットなどを手がける角田氏ですが、最近ではハリネズミブームの火付け役となった写真でも知られています。
初回である今回は、角田氏に仕事観やライフワークであるハリネズミとの暮らし、そして、庭をつくるなら。
さまざまな角度からクリエイティブなお話をお聞きしました。

短時間に意識を集中。一瞬を逃さない確かな目。

 広告撮影の仕事というのは、現場でタレントさんとはじめましての場合が多いんです。そして15分とか30分という短い時間でメインビジュアルを撮るんです。なので、少ない時間のなかに濃厚なコミュニケーションを取る必要があります。話しながら、その人の顔の特徴や動きの癖などを確認し、何枚か試し撮りをしつつ「この人はもうちょっとこっちの振りのほうがかっこいいな」「こういう表情のほうがきれいなんじゃないか」ということを考えます。短い時間のなかで、その撮影で求められる世界観を出せるように。それは20年やっていた中で、自然に修得してきたものですね。

 被写体と向き合う時には、僕自身がモデルをやっていた時に感じたことを大切にしています。例えば、このカメラマン、モデルには優しいけど、スタッフに対してはすごく怖い顔で怒るな…と思うと、もうそれが怖くっていい顔ってできなくなりますよね。自分がされて嫌だったことはモデルさんに対してもやめてあげたい。なおかつ、決められた時間の中で集中して撮影したほうが、いい顔が出せるんじゃないかと思っているので、なるべく早く終わるように、短い時間に集中していいものをつくろうと心がけています。だらだら撮るよりも、最初に会った時の興奮とかワーッという感じ、そのテンションのまま撮りきってしまうってことですね。

 仕事に対するスタンスはカメラマンになって以来ずっと変わらず。短時間でクオリティの高いものをって心がけているんですが、震災後いろいろ考えた時に、がつがつ仕事しているばかりでは楽しくないし、疲れちゃうだけだって思うようになったんです。10年くらい前は休みもなく、家に帰るのは2週間に1回くらいでした。それは家族のためにもよくないと思って家に毎日帰るようになり、仕事に関してもそんなに気張ってやらなくてもいいなと思うように。特にここ2・3年は本当にゆっくりペースで仕事をするようになりましたね。

 ペースがゆっくりになった分、一つひとつの仕事に対してじっくりていねいにむきあえるようになったんです。そうすると不思議なことに集中の仕方も変わるんですね。ものすごく集中するから、終わった!って思った瞬間に一気に疲れちゃう。集中力を使い切っているから、遠方のスタジオ撮影の時には、必ず帰ってくる前に仮眠をとってから帰ってくるんですよ。

 そういうふうにライフスタイルが変化していくなかで出会ったのが、ハリネズミだったんです。

愛らしい被写体と描く穏やかなライフスタイル。

インスタアイドル「あずきくん」
インスタアイドル「あずきくん」 @hedgehog_azuki

 ハリネズミを飼い始めた時には、まさかそんなに注目を集めるとは思っていなかったんです。1日に1枚くらいアップできればいいかな、という気持ちでインスタグラムを始めました。写真全体の世界観をつくるのは、僕にとっては当たり前のことだったのですが、ハリネズミはまだ日本で飼っている人が少なくて、必然的に写真も少なかったので、「かわいい表情どうやって撮るんですか?」「どんなふうに小物をあわせていますか?」という飼い主さんからの質問が届くようになって。とはいえ半年くらいは、数千フォロワー程度だったのですが、ある時、海外のサイトで動画を取り上げてもらったことをきっかけに、みるみるうちに10万フォロワーを超えてしまいました。

 ハリネズミって、とても警戒心の強い生き物なので、可愛い表情が撮れるシャッターチャンスは1,2秒なんです。しかも、初めて会ったハリネズミを僕が撮影しようとしても上手くいかない。何カ月も一緒にいて、信頼関係ができて、やっとかわいい表情が撮れるんです。コミュニケーションがとても難しいし、基本、言うことは聞かない。だからこそ、いい表情を見つけてあげるとか、一瞬の表情を逃がさないとか、仕事で被写体に向き合うなかで培ってきたものが、活かされているかもしれないですね。

 僕は濃厚なB型気質で(笑)、いったん夢中になるとすべて放り投げてそれだけになっちゃうことがあるんです。中途半端に終わらせられず、やりあげないと気が済まないんで、水槽レイアウトに夢中になっていた時期もありましたし、それが今はハリネズミ。闘争心に火がつくというか、短期間でがーって調べて極めたいと思い始める。統計とったりするのもなぜか好きなので、例えばインスタグラムであれば、どんなハッシュタグの時にフォロー数が増えたか、など細かく分析して、この小物をあわせた時にはすごくコメントが増えた、という情報を自分の脳内にインプットしておいて、それらを意識しながら、多くの人が喜んでくれるものを提供するようにしています。

年齢とともに感じる心地よさや癒しの重要性。

 家を建てて10年目になるんですが、家が小さいので、庭にあたる部分は駐車場にしてしまっています。建てた当時は、都心に近いほうがいいし、庭は必要ないと感じていた。それが、だんだん年を重ねるとともに、庭がある家に住みたいなと思うようになりましたね。今僕は42歳なんですが、30歳の時に、建築家さんと相談しながら「これがいい」と思って建てたはずなのに、今になってみると、「ちょっと住みづらい」と思う部分もいくつかあるんです。あの時、どうしてここをこうしなかったんだろうと思う、その一つが庭なんですね。

 ファッションもそうなんですが、最先端というのが疲れてきてしまって、もうちょっと自分に対して優しいものを好むようになってきているんです。たとえば、素材感だったり着心地だったりと、半年ごとにアップデートされるトレンドではなく、心地よさを大切にしたい。居住空間についても快適さを重視するようになってきました。だから家プラスちょっとした小庭、という写真などを見ると、「いいなぁ、欲しかったな」って思っちゃいますね(笑)。

 年齢に応じて価値観や優先順位は変わってくるものだと思うんです。僕が家を建てた時に、「いいな」って言ってくれた人たちが、最近家を建てるようになってきたんですが、その人たちは都心ではなくちょっと郊外に家を建てて庭があって、犬を飼ってみたりハンモックがあったりするんです。そういうのを見たら、今度は逆に僕のほうが「いいな」って。心の余裕とか癒しとか……年齢を重ねるとともに、そういうものがほしくなるのかもしれません。

ファッション・ビューティー・広告などのポートフォリオ&愛機のPhase One
ファッション・ビューティー・広告などのポートフォリオ&愛機のPhase One
写真集『あずきとうに』
インスタアイドル「あずきくん」と、ガールフレンド「うにちゃん」との写真集『あずきとうに』。

疲れた心と体を癒すオアシスとなる庭の存在。

 自分自身が庭をつくるとしたら、現実的に考えるとハリネズミを放して遊べる庭がほしいです。雑な感じではなく、ちゃんと整えられた芝生がある庭。硬い感じでなく、柔らかいほうがいいので、ウッディな雰囲気で、それでいて囲いなどもきちっとしたプライベート感もあるような…。もしも、土地や予算に制約がなかったら?そうですね、だだっ広くなくてもいいんですけれど、イギリスやフランスにあるような優しい感じの庭をつくります。例えば、枕木のような素材を縦に並べて高低差を出した花壇を庭の隅につくって、お花を一面に植えたり、木を植えたり、バラを育てたり。すごく広くなくてもいいんですが、土や外気を感じられる空間があるのがいいですね。

 それから、外の雰囲気が家のなかまで続いているのも素敵ですね。今住んでいる家も靴でそのまま歩けるスペースが普通の家よりちょっと長い造りになっていて。いわゆる土間の空間が多いんですね。その延長上で、庭なのか、家のなかなのかわからない空間、庭の雰囲気を感じさせる空間が家の中心にあるのも面白いかもしれません。ハウスメーカーさんとかでも家の中心にガラス張りになった中庭などの提案ありますよね。あれをもっとガーデニングのできる庭にしてしまうのも素敵だと思いませんか。

 限られた空間であっても、庭、土や植物の存在って、目からも癒しの効果があると思いますし、実際に土を触ったり土のにおいを嗅いだりすることが人間にとって重要な癒しになるような気がします。特に都心にいるとすごく疲れるので。お手入れする時間が得られるのも庭の醍醐味だと思います。僕の場合は、水槽レイアウトをしたり、ハリネズミのお世話をしたりするのは楽しみであり趣味。だからこそ、仕事でクタクタになったあとに夜中に帰っても餌を調合したりするのが癒しになっているんです。それと同じように庭とも関われたらいいですね。

手入れが行き届いた世界観のある庭を。

 自分がもし、ガーデンデザイナーとしてクライアントに提案する立場になったとしたら、その人に対して徹底的にリサーチすると思います。その人のことを、どういうバックグラウンドがあって、どういうものが好きでと細かくリサーチしたうえで、提案をするんじゃないでしょうか。だからクライアントによって、提案はどうしても変わってしまいますよね。ただ、自分的にこういうのがおすすめですよ、という視点でしたら、木がいっぱいある庭を提案しますね。若干「森なのかな?」と思うんだけれど、よく見ると一本一本ちゃんとお手入れがされている感じが僕はちょっと気になっています。

 あとはやっぱりお花がたくさんある庭ですね。近所に、どの季節に前を通りかかってもどこかにバラが咲いている庭があるんですが、きっとバラの特性を熟知されていて、花のない時期がないように配慮されているんだろうと思うんですね。そういう庭は素敵です。ぱっと見、整いすぎているより、ちょっと枯れている子や枝がピョンッと飛び出している子がいるのはいいんです。それでいて配置がデザインされていて、空間全体に一体感があるような。計算されていないように見えて、計算されている。難しいですが、そういう世界観のある庭が素敵だなと思います。

角田さん

カメラマンとして、さまざまな世界観をつくりあげている角田さん。被写体に対してはもちろん、ライフワークとなったハリネズミなど、その目に映るものすべてに優しいまなざしを向け、素敵な世界観を切り取っていく角田さんの描く庭。穏やかな癒しを感じられるクリエイティブな視点がそこにはありました。

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